銃 中村文則 ※感想、ネタバレあり
中村文則さんの作品「銃」を読みました。
「これほど美しく、手に持ちやすいものを私は他に知らない」
この作品は新潮新人賞を受賞した中村文則のデビュー作で、2018年11月に村上虹郎さんや広瀬アリスさんらのキャストによって実写化されたことでも話題になりました
偶然、銃を手に入れた主人公西川がその銃の持つ圧倒的な美しさや暴力性に魅せられて狂気じみてくる一方で、西川の等身大で現実的な生活も細かく描写されている純文学的な作品です
個人的に予想していた内容とは大きく異なっていたものの、主人公の狂気的な内面や銃の美しさに関する描写や表現などの文学的な表現をこれでもかというほど堪能できる作品だと思います
価格:583円 |
※以降、ネタバレを含みます
まず第一にこの作品はサスペンス要素がほとんどゼロです
僕は予備知識なしの状態で読み始めたのですが、タイトルや冒頭の感じ的に銃をめぐって変わっていく主人公をめぐるサスペンスなのかと思っていたのですが全く違いました
この作品を起承転結でまとめると
起:主人公の男子大学生、西川ケイスケが河原にあった死体から拳銃を手に入れる
承:ケイスケは拳銃に魅せられていくも、拳銃を持っていることから日常生活にハリが生まれ充実した日々を送る
転:しかし銃に魅せられすぎたケイスケは銃を実際に使用したい衝動が抑えられなくなっていく、また危篤状態の実父がケイスケに会いたがるなどしたことの出来事があり、ケイスケは夜の空き地で瀕死の猫に対してついに銃を撃ってしまい、そのことからケイスケの銃の所持を確信する刑事が現れ、銃を捨てろと警告される
結:一度銃を使い銃への衝動が抑えられなくなるケイスケ。ついに子供に虐待をする母に銃を使おうとするがギリギリのところで思いとどまる。銃を手放そうと決意するケイスケだが、手放しに行く電車の中で迷惑行為をはたらく男と揉め、発砲してしまう。
拳銃による自殺を決意するも手が震え、弾を込められないところでエンド
という感じです。
ケイスケが拳銃を拾うことになった自殺死体の素性も明かされることはなく、ケイスケの拳銃所持を確信する刑事もケイスケに警告を与える存在であったりと、前述した通りサスペンス性はほぼなかったです。
ですが、拳銃を拾ったことにより変化していくケイスケの内面や.銃の美しさによる描写には目を見張るものがあります。そのほかにも銃を所持していることにより半ば非日常の世界にいるケイスケの現実の生活である大学生活と狂っていくケイスケがそれらにどう影響を及ぼしていくかなど、様々な面でとても読み応えのある作品でした。
是非一度読んでみて下さい!
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